※今回のブログはこの記事の続きです。先にこちらを見ていただいたほうがわかりやすいかと思います。
さて前回は主にプーさんのハニーハントQラインからアトラクションまでに描写される、現実から夢へのグラデーションの考察をしました。
今回はアトラクションから出口、つまり夢から現実へのグラデーションについて解説していきます。
アトラクションを降りると広がっているのは夕焼け空とバラのアーチです。私たち、つまりクリストファー・ロビンはまだ子供ですから日が落ちる前には家に帰ってくるよう言われているのでしょう。
バラのアーチはイングリッシュガーデンでポピュラーに見られます。Qラインと同じ庭だとすると、もう現実の世界の我が家に帰ってきたということでしょうか?
さて前回は右に曲がってまっすぐベッドルームへ帰りましたが、今回はまっすぐ前に進んでプーさんコーナーに入っていきましょう。
これはアトラクション側からのプーさんコーナーへの入口です。ハチの巣のステンドグラスが素敵ですね。
みにくくて申し訳ないのですがよく見ると蜂も飛んでいます。
そしてこれはその横にある小さなステンドグラスの窓で、裏側はレジになっています。
この二つを比較してみると全く同じ色で作られていることがわかります。これをよく覚えておいてください。
さてプーさんコーナーに入るとたくさんのプーさん的要素が見られます。
まず目を引くのがたくさんの蜂蜜の壺。
裏側のレジも蜂蜜の壺になっています。
そして後ろには輝くハチの巣。
商品棚の最上段のディスプレイにはバスケットに100エーカーの森で採ってきたと思われるたくさんの花や植物が詰まっていて、上の縁の部分には蜂が飛んでいます。奥側や両端にはかわいらしいタッチで描かれた植物も飾ってあり、そこにも蜂が飛んでますね。
一見何の変哲のない入ってすぐ右手側のレジはよく見ると台が蜂蜜の壺のシルエットになっています。そして奥の窓には夕焼け空が映っており、私たちは帰ってきてからまだそう時間はたっていないことがわかります。……と、このようにまだまだ紹介しきれないほどたくさんのプーさんエッセンスが詰め込まれた楽しいプーさんコーナーですが、どうやらこのレジから先は少し様子が違うようです。
このレジはたくさんの蜂蜜の壺とモニターがある、あの一番目立つディスプレイの目の前にあるレジなのですが不思議なことに一切プーさん的要素が見当たりません。
レジの台はただの棚のようですし、後ろに飾られている絵もプーさんとは無関係のもののようです。さらに先ほどまで梁にたくさんぶら下がっていたハチの巣の装飾まで無くなっています。しかしほかのレジや店内に存在する窓と同じように後ろは夕焼けが透けているので恐らく時間軸や世界軸は共有しており、突然場所や場面が変わったわけではなさそうです。
実はこのレジより先から奥、屋外側に近づくにつれプーさん的要素は徐々になくなっていきます。これは前回紹介した現実→夢のグラデーションと完全な対になっています。
プーさんコーナーの代表的な装飾の一つである森の仲間たちのセリフもちょうど真ん中当たりの梁を最後に消えてしまいます。
今回はさわりというころで、この辺りはまた次回以降に詳しく掘り下げます。
ところで冒頭に紹介したステンドグラスを覚えているでしょうか。ハチの巣柄ではない、小さいステンドグラスは向こう側がレジになっていると紹介しました。
そのレジとは先ほど紹介した棚をレジ台にした質素なレジです。
プーさん的要素が完全にない場所にあるということからこのステンドグラスは現実側の存在であることが伺えます。
そして先ほど紹介した通りこの小さなステンドグラスと、入口ドアに使用されているハニカムのステンドグラスは素材とカラーリングが一致しています。
ということは入り口ドアにあるハチの巣のステンドグラスは現実に存在しているわけではなく、プーさんたちとの大冒険が終わったばかりでまだ夢うつつな私たちがこの規則的に並ぶ透き通った黄色の多角形に思わずプーさんの大好きなハチの巣を見出してしまい、そのように見えてしまったということかもしれません。
どうやら夕焼け空に見送られ、一見現実の世界に戻ってきたと思われるあの時点でもまだまだ私たちはプーさんワールドの途中だったようです。
恐らく東京のプーさんコーナーはクリストファー・ロビンの別荘をモデルにしています。なのでこのステンドグラスをロビンは毎日見ていたはずです。見慣れたものも想像力次第で物語の一部になるというのはまさにくまのプーさんにぴったりな演出ですね。
最後にこの空間が“夢うつつ”な状態であることを予想させるヒントをもう一つ紹介します。
それはこちらです。
同じ画像を先ほども載せましたが、衝撃的な秘密が隠れています。皆さんお気づきでしょうか。
なんとここには「Hunny」といつもの間違った綴りの壺だけではなく「Honey」と正しい綴りでかかれた壺もあるのです。
前回紹介した通りこのアトラクションの英名は『Pooh‘s “Hunny” hunt』であり、それはこのアトラクションはそれ自体がクリストファー・ロビンの空想の世界なので、名前も幼い彼が間違って覚えた綴りになっているためと解説しました。つまり、この間違った綴りというのはプーや森の仲間たちによるものではなくクリストファー・ロビンによるものであり、Honeyの綴りは本来プーさん世界には絶対登場しないはずなのです。
この家では庭で養蜂を行っているようなので(あのようなかわいい壺に入っているかはわかりませんが)この家に、大人が正しい綴りでラベリングした本物の蜂蜜があってもなにもおかしくはないでしょう。
このようにプーさんコーナーはQラインと比較すればかなり小さいエリアでありながら、同じかそれ以上細やかに現実と夢のグラデーションの演出がなされているのです。
今回はここまで。
次回はさらにプーさんコーナーを掘り下げていきます。